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「メッセンジャーって自由でいいね。」と配達先で言われた。
確かにメッセンジャーは自由だと思う。一日をオフィスで過ごす人から見れば、憧れもあるのだろう。

ただし自由には払うべき代償がある。「人間は犬に喰われるほど自由だ」というインドの写真を思い出す。自由というのは惨めな物だ。束縛というのは安全綱でもあり、自由とはロープから手を離して落下していくことでもある。

 

「メッセンジャーってカッコイイね。」と言われる。
メッセンジャーをスタイリッシュだと感じてもらえるのは嬉しいが、記号化されたハイプなイメージだけが広まっているのも事実。実情は3K労働。そのうえ危険な仕事のわりに収入は高くない。雨の日にはずぶ濡れで泥だらけ。カッコイイわけなんてない。「ドブネズミみたいに美しくなりたい」なんて歌もあるけれど。

 

PEDALに出てくるエリックは地下鉄の廃坑に住み着いている。その姿はまさに都会の隙間に身を潜めるドブネズミ。薄汚い服装とタバコ。

寒さのために痛めた脚を杖でかばいながら「辛いことが多くてもメッセンジャーを続けたい」と言う彼の姿を「カッコイイ」とは言えない。

 

これはステレオタイプなメッセンジャーの映画ではない。

「ピストバイク・ムーブメントin NY」なんて副題が日本版にはついているが、ピストの映画でもない。「メッセンジャーのリアリティーを描いた」というのが世間での評価だが、僕ならこう言う。

「メッセンジャーの”the other side”(知られざる一面)を切り取った映画」

この映画でアナタが出会うのは、汗臭く泥臭く、どこか歪んだ人間達だ。
灰色でせわしないニューヨークの街を、何かに取り憑かれたように走るスケルトー。彼の話はとりとめがなく、早口でしゃべる理由も荷物の配達で急いでいるだけではないように感じる。

 

神の福音を説くのが仕事と言うエヴァンジェリス。

「悪魔の存在を感じるビルには入りたくない。」なんて選り好みをする人が何故メッセンジャーをやってるのか?他の職場で雇ってもらえないのも理由だろう。

 

キッドという名前のイカツイ兄ちゃんは生粋のブルックリンっ子。

彼のしゃべりはブルックリン訛りというよりヒップホップ。子供のような眼をしてメッセンジャーの魅力をとめどなく語りまくる。

 

カメラは彼らの姿をスタイリッシュに捕らえることはしない。
魚眼レンズで誇張された顔のアップ、その背景に湾曲して見えるNYの景色は不安感すら感じさせる。社会に馴染めないエキセントリックな人たちと、彼らの眼からみた歪んだ世界感が見える気がする。

「メッセンジャーは自由」「かっこいいピスト」そんなのが見たいならPEDALはやめといたほうがいい。誰にでも楽しめる簡単な映画でもない。自転車に乗りたくなる映画でもない。

だけど僕は素晴らしい映画だと思う。
せわしなく、薄汚く、確かな未来もなく、浮遊感の漂う彼らの存在を「美しい」と感じるからだ。
そして切ないことだけど、それが自由の”the other side”だと知っているからだ。


(文:タクヤ @メッセンジャーKAZE

WEB SHOPにて発売中!

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Producer

アナ・ロンバルト

Director

ピーター・サザーランド

DURATION

52min. + Bonus 22min.

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