「幸運と悪運、この2人がパリ~ルーベの主人公だ。機材トラブル、事故、そして天候がゴールラインを超えられるレーサーを決める」
ロードレースが生まれた時代の冒険精神を未だに宿す、骨太なレース。パリ~ルーベ。「北の地獄」「地獄の日曜日」なんて呼ばれる過酷なレース。パリ~ルーベ。
何が凄いってコース長の2割強を占めるパヴェ(石畳)。ほとんどの選手がパンクするは、機材は潰れるは、落車で骨折なんて茶飯事。砂埃やドロで前が見えなくなることも。道幅も狭い悪路なのでサポートカーが選手に近づけないなんて聞きました。

“Le Salaire de la peur”「恐怖の報酬」なんてフランス映画を思い出します。ニトロを積んだタンクローリーがウォッシュボードを走る。ハンドルさばきを間違えれば爆発、かといってスピードを落とせば共振が起きて爆発!
“Paris-Roubaix est une connerie !”「パリ~ルーベはクソったれだ」なんてベルナール・イノーが毒づいたのもナットク。
「これはロードレースとは別のスポーツだ」 リーヴァイ・ライプハイマー
脱落するレーサーも多く、普通のレースのような作戦が立てられない。
ジャン・マリー・ルブランをもってして「アメリカ人初のチャンピオンが出るとしたらそれはヒンカピーだ」と言わしめたジョージ・ヒンカピー。だが2006年、ゴールを目の前にステアリングコラムの破断で落車し骨折。リタイア。
エースが脱落する可能性も高いのでアシストがサポートしていてもしょうがないって感じ。選手個人の力と運が試されるレースなのです。
「このレースはゴールすることすら難しく、それだけで賞賛に値する」 イヴァン・バッソ
個人的な話になっちゃいますが、昔、耐久レース用のサスペンションロードフォークを造る会社で働いてました。パリ~ルーベでの製品テストの資料があったのですが、ありえない悪路。5cmの高さのパヴェ、それも角が丸まっている。振動でホイールが浮いてしまい空を飛んでるようなもの。カーブはおろかブレーキングも車線変更も無理!
選手にはウェイバー(権利放棄書)にサインしてもらってました。「フォークが折れても訴えません。死んでも構いません。」みたいな。
RockShoxも「パリ~ルーベ-SL」なんてロード用サスペンション出してたし、最近ではSpecializedが「ルーベ」って振動減衰のよいフレーム出してますが、そういうレベルではないですね、あの石畳は。

「3週間のツールドフランス、たった1日のパリ~ルーベ。だけど身体へのダメージは同じだよ」 ジョージ・ヒンカピー
そんな過酷さにも関わらず、コレだけ選手に愛されるレースも珍しい。
ヒザを骨折してもまた挑戦しにくるレーサー。身体をいためて以降のシーズンを棒に振るのをいとわず攻めるレーサー。このレースに勝つことを人生の目標にするレーサー。
山があったら登らずにはいられない。下りではMAXスピードを出さずにはいられない。そして、怪我するかも知れなくてもパリ~ルーベに挑戦せずにはいられない。
ロードレーサーというのはそういう人種なのでしょうか?ちょっと変態っぽいかもね。
コースがアスファルトで舗装されたら、主催者がワザワザ別の悪路を探してきて翌年からのコースに組み込んだりしてるしなぁ。優勝したらパヴェの石をもらって喜んでるしなぁ。

「このレースでは石を愛すること。それが一番大事なのだ」 ペーテル・ヴァン・ペテへム
この映画の終わりに、レース後の選手の顔がアップで映されます。
砂埃と擦り傷に汚れた顔はいつの時代の人か判らない。過去の選手の写真も挿入されているのですが見分けがつかない。機材やユニフォームが違うだけ。
ロードレースとは人間の闘いだ!ってことを思い出させてくれる。もしあなたがロードレースに興味を持ち始めたところなら、自転車をどうこう言う前にこの映画を見て欲しい。ロードレースのスピリットとは何なのか。その答えはこのDVDにあります。
(文:タクヤ @メッセンジャーKAZE)
出演
ランス・アームストロング、トム・ボーネン、イヴァン・バッソ、ジョージ・ヒンカピー、他
DURATION
71min.





