BMXのビデオってよく出来てる。被写体のライディングやテクニックは当然、音楽もいいし、ファッションも文句のつけどころがない。
ただ何本か続けてみると全部同じに見えてくるっていうか「どう?オレってスゴイだろ。」「かっこいいだろ。」俺が俺がって感じが鼻についてくる。
失礼しました。あくまで個人的な感想です。
どうしてかって考えるとスタイルへのこだわりが強くて、そのスタイルが好きな人にはアピールするんだけど、僕みたいな「BMXって面白そうだなぁ」ってレベルの中途半端な人間にはピンポイントすぎるんだろう。
というわけでこの「joe kid on a STING-RAY」これが目からウロコ。
1963年にシュウィンがスティングレイを発売し、1970年に西海岸の子供たちがオフロードバイクのまねをしてBMXを生み出すところから映画は始まる。(ビーチクルーザーみたいなカンチレバーフレームの小径車にまたがってMTBのコースみたいなオフロードを走る姿が可愛い。)BMXの誕生からマット・ホフマンまでバッサリ俯瞰する距離感が面白い。

サンタモニカでレースが始まり(主催は13歳のスコット・ブライトハウト。後のSEバイクスの創業者)、NBAが生まれ、BMX雑誌(ペラペラな新聞みたいなの)が発刊され、このスポーツの創世記の姿が貴重な映像で綴られる。
ヌーディストビーチでレースをしたり、サイドカーを造ってレースしてみたり、のんきで楽しそうな映像に頬がゆるむ。オリジナルなものが持つ遊び心、パイオニアの純粋さがここにある。

1974年、ヤマハが主催する本格的なレースが開催され、いやいやあんまり詳しく書くとネタバレするんだけど、ドラッグレースのビルダー達がレースフレームを進化させ、スケートボードの影響でパークライディングが発生する。
仲間のナンバープレートやBMXアクション誌のコミックを描いていたボブ・ハローがあふれるクリエイティビティーでフリースタイルを生み出す。80年代中頃には専用バイクも出てくる。(が、ペグのことをアクスルエクステンダー=延長車軸なんて呼んでたり。)
ショーアップされていくフリースタイルには音楽の影響があった。(といってもベタベタのヘビメタだったり)そしてドラッグやコマーシャリズム、事故や怪我といったネガティブな影響も。
今となっては恥ずかしいピンクやネオンイエローのファッションがどうしてデニムとTシャツのストリートスタイルに取って代わられたのかというと、、、ネタバレはここまで。
何が言いたいのかというと「joe kid on a STING-RAY」はBMXの歴史というだけでなく、世の中との関係や時代の感覚が垣間見える。
今は大人となったライダーや関係者たちが眼を輝かせて当時の事を語るインタビュー。オッサンになってもどっぷりBMXの世界で生きている人の言葉がかっこいい。
BMXのBMXによるBMXのための映画ではないのだ。視点が大きいんだよね。
貴重な映像と濃密なインタビューで世界観が作られて行くドキュメンタリーの醍醐味は、「BMXにちょっとだけ興味がある」なんて人にもオススメです。
しかし、本当に見てほしいのは今BMXを頑張っている人達。自分のスタイルを生み出そうともがいている人達。

新しい物事を創造するには、歴史を知り、自分がどこに立っているかを知っとかないといけない。10年後を考えるなら10年前を知っとかないといけない。30年後に進む道は30年前を知らないと切り開けない。進化していくBMXの世界の中で自分が何者なのかを見つけるには、BMXの歴史や自分を取り巻く社会を知っておく必要があるのは当然。全編コマ送りで100回は見て損がない映画だと断言します!
トリビア:
ナレーションはロスのカスタムチョッパー屋、「ウェストコーストチョッパーズ」のジェシー・ジェームス。ホットロッドやハーレーはもちろんレース用のモトクロスバイクまで。果てにはSUVにバルカン砲を搭載なんてムチャクチャな仕事をする人なんだけど、自転車も好きなんだねー。
(文:タクヤ @メッセンジャーKAZE)
出演
Scot Breithaupt, Stu Thomsen, Spike Jonze, Greg Hill, Bob Haro, MatHoffman, Dave Mirra, Ryan Nyquist 他
Director
John Swarr, Mark Eaton
DURATION
90min.





